第3回                                  こんなに違う!DNARの有無で変わる人生最後の瞬間‼ No3

前のブログで、DNARの同意がある場合の話をしました。今回は、同意がない時の実際を紹介していきたいと思います。

前回と同様に、皆さんにイメージしやすいように架空の患者さん、でる子さんとその家族に登場していただきます。読みやすいように前回と内容が同じ部分にマーカーを引いておきます。

でる子さんの説明です。100歳女性。主な病歴としては、認知症、寝たきりの状態です。入院する前は、在宅でご家族と社会資源を活用しながら過ごしていました。ですが、最近肺炎になり入院しました。

入院時のDNARの同意を取る場面からです。一室に家族、Dr、Nsがいます。

Dr「治療はできる範囲で行います。ですが、高齢でもありますし、今回の肺炎がきっかけで入院中に最後を迎えられる可能性もあります。その時、蘇生つまり心臓マッサージや人工呼吸を希望されますか?」

家族(キーパーソン)「少しでも長く生きていてもらいたいし、それが本人の希望でもあるので希望します。」

Dr「わかりました。こちらの用紙に記入をお願いします。」

数日後、肺炎は改善し退院が3日後に決まりました。

Nsがでる子さんの部屋に訪室。呼吸をしていない事に気づく。体温と脈を確認。暖かいが脈拍を触知できず、心音も聞こえていない。

直ちに院内に緊急コールをします。いわゆるコードブルーです。その場のNsはBLS(一般的な蘇生法)に基づき直ちに心臓マッサージを開始します。Dr含め多数のスタッフが集まってきます。心マをしていた第一発見Nsは、心マを他のスタッフと変わり、Drへ状況を説明します。スタッフが集まってくると同時に救急カート、AED、除細動器も持ち込まれます。Drの指示のもと、本格的な蘇生が始まります。

心マと人工呼吸が絶えず継続される中で、気管挿管準備、モニター装着、末梢ルート確保を行います。

これと同時進行で、ご家族へ連絡をします。

Ns「でる子さんの呼吸、心臓(これはモニターで確認した)が止まっています。今蘇生を試みています。焦らず慌てずに来院していただきたいです。」

ご家族「わかりました、今から向かいます。」

ちょっとここで止めます。私が家族だったら、入院している親族の心臓と呼吸が止まったと聞いたら平常心ではいられないと思います。ましてや、少しでも長く生きていてほしいと願っている家族ならです。家族が受け取るこの第一報の衝撃は、想像しがたいものだと思います。個々の状況によるので、ここでは省略させてもらいます。

ご家族が来棟するまで、蘇生が試みられます。必要ならば、手術室に行く場合もあります。

ご家族が来院されました。もし、来院されるまでに30分かかったとしましょう。その間に心臓の動きが再開されなかった場合、30分間心臓マッサージが継続されています。100歳の人に胸骨を約5㎝押し下げる動作をです。1分間に100~120回のペースです。単純計算3000回程圧迫しています。ご家族が訪室しても行っている状況です。大人が一人患者に覆いかぶさっている状態です。絶え間なく押された胸には青あざができることもあります。

病院スタッフは、来院されたご家族に対してこの状況をすぐに見せることは無いです。部屋に入る前に、状況を説明し、この状況を直視できるかの確認を行います。

ご家族の入室。

現場を指示していたDr「30分蘇生を試みていますが、残念ながら回復の見込みはありません。蘇生を中止してよろしいですか・・・」

キーパーソン「・・・はい。」

Drがスタッフに対して「蘇生中止。」と指示を出します。

心マや除細動、モニターの装着のために胸部が露出されているので一旦閉じます。と同時に、ベッド周りをさっと整頓し、ご家族に寄ってもらいます。

ご家族見守りのもとでDrより死亡確認が行われます。

いかがだったでしょうか。今回は、30分の蘇生を行い、蘇生できなかった場合作成しました。他の場合として、蘇生できた場合があります。

次回は、DNARの同意が無しの状況で蘇生ができた場合の実際をお伝えしたいと思います。

※この状況は、あくまで、でる丸が今までの経験から想像した架空のものです。